TEDxAPU 2025: Odyssey
Written by: CHERID Azel Thara & Kayla Adella Utama
Edited by: Mir Mustaufiq Rahman
Translated by: 中山帆々子
長年にわたり、TEDxAPUは、学生主体のTEDイベントを数多く開催してきました。今年のイベントでは、「Odyssey(オデッセイ)」というテーマを基に、近年のTEDxAPUの節目を祝う内容となりました。今回のイベントでは、魅力的な登壇者たちが自身の体験を元に、短期間の成功体験ではなく、人生という長い旅路に脚光を当てた物語を語ってくれました。これらの話は、時間をかけて歩む道のりの重要性を、聴いている人々に改めて気付かせる内容となりました。

今回のイベントは、一年のハイライトとも言える大舞台となりました。世界的に知られる教育機関「KUMON」の英語イマージョン活動とAPU Connection Hubの協力を得て、開催されました。イベントに先立ち、前年の12月に行われた SSL(Student Speaker League)では、今回の栄えあるTEDxAPUで登壇するメンバーが選考されました。数多くの挑戦者の中からSSLを通して選ばれたのは、Cattleya Avery Eunice Javian Daubさん、渡邉有陽さん、Sunny Peridaさんの計3名でした。 更に、「太陽の家」理事長の山下達夫さん、立命館アジア太平洋大学(以下APU)学長の米山裕さん、ライフスタイルインフルエンサーの稲垣敢太郎さんの計3名のゲストスピーカーが登壇しました。 また、イベントの最後には、シンガーソングライターのXeva Al Gazelさんによるパフォーマンスも行われました。今回のイベントは開催するにあたって、主催者側の綿密な計画と、スタッフの尽力のお陰で、登壇者が最高のパフォーマンスを発揮できる舞台が整えられました。今年のTEDxAPUの最初のスピーチを飾ったのは、3名のSSLの勝者たちでした。彼らは堂々と安定した態度でスピーチをし、聴衆に新たな体験と繋がりを与えてくれました。

最初に登壇したのは、Cattleya Avery Eunice Javian Daubさん。彼女は「Why I Refuse to Unfriend My Dead Mom(なぜ私は死んだ母親を『友達解除』しないのか)」という衝撃的で観客を釘付けにするスピーチタイトルから話を始めました。彼女のスピーチはこのデジタルが浸透する時代において、「弔い」とは何かを考えさせるような内容となりました。デジタル上のコミュニケーションを通じて、命の意味、そして喪失をどう共有できるのか。聞き取りやすいはっきりとした声でリズムに乗ったスピーチは、聴衆に深い共感の念を抱かせました。

次に登壇したのは、渡邉有陽さん。彼女は日本語でスピーチを行い、とてもシンプルで難しい「あなたは自分のことが好きですか?」という質問を観客に投げかけました。彼女は世の中の偏見や自己不信に対して、自分らしさを愛することで心を安定させる方法を教えてくれました。その方法は、無理して自分らしさを変えるのではなく、「本当の自分自身を知ること」だと語りました。彼女の語りは穏やかでありながら聞く人の心に響く、力強いスピーチでした。

3人目の登壇者は、Sunny Peridaさん。彼は、「ユーモアは幸福の副産物」という常識に挑戦するスピーチを行いました。彼は自分の経験を通して、「笑顔」が自分と周囲の環境をつなげるのに大きな役割を担い、困難を乗り越えるための道しるべになっていたことを語りました。彼のスピーチのもつ強みは、とても誠実で正直な姿勢から来ています。幸せの本当の意味とは何か、そして、人々が無意識の内に最も辛いとき、ユーモアを頼りにしているのではないか、という一つの考えを話しました。彼はスピーチの中にパンチラインを組み込むことで、誠実さと弱さに触れるトーンを保ちながら、聴衆がより楽しんで聞けるように工夫を凝らしていました。話の内容は誰もが共感でき、心に突き刺さるような現実を思い起こしました。これらは、聴衆に深い余韻と、自身を振り返るきっかけを与えながらも、何度も笑いが起きる、見事な調和を見せてくれました。

3人のゲストスピーカーの最初の語り手として登場したのは、障がい者の就労支援を専門とする、日本の社会福祉法人「太陽の家」の理事長山下達夫さんでした。山下さんは主に自分の体験から、予期せぬ困難が彼に計り知れない情熱を与えるきっかけとなった、これまでの道のりを語りました。山下さんは、会場でのインタビューで「できないと言わずに、できることを探し続けてください。」と、力強い言葉を残してくれました。更に、向かい風が吹いていると感じる中、ゴールに向かって進み続けているときに、「新しい挑戦や困難に恐れないでほしい。」と鼓舞しました。彼の道のりは決して易しい道ではありませんでしたが、別府市で活動するなか、人々が街に合わせて変化するのではなく、街がそこにいる人々に合わせて変化していくことに気づきました。もし、世界中がこのようにお互いを理解しあえたら、不可能はないのだと、力強く締めくくりました。

次に登壇されたのは、APUの学長米山裕さんでした。スピーチの冒頭で、「私はここに来たことを一度も後悔したことはありません。APUは私の夢の大学です。」と語り、自身の予期せぬキャリアに至るまでの「オデッセイ(旅路)」を語り始めました。米山学長は生涯を通して、自分は内向的な性格だと強く感じてきたと話します。APU Timesでのインタビューでは、記者が「もっと生徒たちに自身の存在について知ってもらいたいですか?」という質問に対して、「私は内向的なので、人に自分のことについて知ってもらいたいことは殆どありません。ただ、生徒の皆さんには、私が一生懸命働いていることを知っていてほしい。」とシンプルに答えました。米山学長は、教授としての教育という厳しい現実に突き当たったとき、内向的な性格にとって消耗しやすい状況に置かれたとしても、決して挫けない姿勢を教えてくれました。米山学長は、人々とのネットワークや社交性が重要な仕事で成功を収める自分の姿を考えるのは難しいと思いました。しかし、米山学長は自分の信じる目標に向かって、能力を一つ一つ積み上げていきました。これらの努力は、一夜にして花開くことはありませんが、それゆえに決して手の届くことのない世界ではないことを証明してくれました。

最後のゲストスピーカーとして登壇したのは、徒歩で日本各地を旅し、その様子を発信することで有名なライフスタイルインフルエンサー、稲垣敢太郎さんです。多くの観客が、彼のスピーチに期待で胸を膨らませていました。スピーチの前に、APU Timesによるインタビューも行われ、彼は旅をすることで得た知見を共有してくれました。彼のTED Talkでのスピーチでは「現代社会」において便利を追求するあまり失ってしまった、私たちの周囲の環境との繋がりについて気付きを与えてくれました。稲垣さんは私たちに、「少し立ち止まって花の匂いを嗅いでみてください。そして、次にどこかに出かけるときは、ぜひ歩いてみてください」と、聴衆に一つの課題を与えました。「足の下に感じる地面の感触、頭上に広がる空の存在。これらは、デジタル社会によって見過ごされるようになった、かけがえのない贅沢です」と稲垣さんは話しました。稲垣さんのメッセージは明快でした。「人生は外の世界に広がっている」というこの言葉は、観客の心に深く刻まれました。
イベントのラストを飾ったのは、シンガーソングライターのXeva Al Gazelさんによるステージでした。映画音楽のクラシックなピアノ曲「Mia & Sebastian’s Theme」から、Sinatraの名曲「My Way」、そして、自身のオリジナル曲である「Just a Dream」を披露し、幅広い才能で観客を魅了しました。この圧巻とも言えるパフォーマンスは、観客に感動を与え、その余韻に浸らせました。
TEDxAPU 2025「Odyssey」はこれまでの名イベントに引けを取らない内容となりました。観客にとって没入体験であり、数々の物語が彼らの心に刻み込まれました。「Odyssey」はその名の通り、それぞれの登壇者の旅路を堂々と語る舞台を提供することにおいて、疑いようのない成功を収めました。今回のイベントを目撃できた幸運な人たちに、「私たちも登壇者たちのように、素晴らしい旅路を送ることができる」という希望を与えました。私たちのまだ始まったばかりの「オデッセイ(旅路)」への希望と勇気をくれた、忘れられないイベントとなりました。

コメント